厚労省による認知症の推移で2021年では認知症患者数は約630万人。
介護保険における要介護者等について、介護が必要になった主な原因では「認知症」が18.1%と最も多くなっています。(2019年)
参考リンク
統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-総務省統計局https://www.stat.go.jp/data/topics/topi1291.html
令和3年版高齢社会白書(全体版)
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2021/zenbun/03pdf_index.html
このように認知症の人は増えており、認知症の症状がどのようにでるのかは一人一人違います。
それがゆえに、認知症の家族の症状にどのように対応していいのかわからない場合もあるのだと思います。
以前、こんなご相談をいただきました。
「認知症の母をデイサービスに送り出していますが、行動が遅くなったのと記憶が悪くなったので準備時間がかかるようになってきました。
身だしなみで洗面台に居ると遠まきに見ていると顔を洗って、クリームをつけて、ドライヤーを当てたとおもったら、またクリームをつけるという感じで同じことを何度もすることも多々あります。
「迎えの人が来てしまうよ」と言っても、時間の観念がないのでマイペースだし、今まで遅れたことは一度もないなどと逆切れしてくるのです。どうやって時間に間に合わせるように仕向ければいいでしょうか?」
認知症のお母さんが、同じことを繰り返して準備が進まない。時間内に自分で準備ができない。それを指摘したら怒ってしまう。
このような場合、どうやって対応したらいいのか難しく感じることもあると思います。
このブログでは、認知症の家族が同じことを繰り返して、時間内に自分で準備できない場合の対応方法についてお伝えします。
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認知症になる前と同じ声掛けでは逆効果
このような場合、多くの人は「できない」に焦点を当て「できない」を解消するためのテクニックを求めたり、できないことを指摘し、理論や正論で説得し、対応しようとします。
しかしこれは逆効果です。
なぜなら、本人は、認知症により、以前自分が遅れたことを忘れていたり、自分の「できない」を自覚することができないので、周りに指摘されると、そんなはずはないと怒ったり、混乱したりします。
怒ったり、混乱したりということが続けば、認知症のBPSDと呼ばれる症状に発展することもあります。
認知症の人が同じことを繰り替えして時間内に準備できない理由
まず知っておいて欲しいのが、認知症の人が同じことを繰り返して時間内に準備ができない、時間配分ができない場合、認知症による記憶の障害、見当識障害、本人の認識の変化などが原因であるということです。
まず、その人固有の認識やこだわり(この場合は身だしなみに時間がかかる)があります。
それに加えて記憶の障害により、行為の手順(この場合は身だしなみを整える手順)がわからなくなったり、身だしなみのどこまでやったかを忘れてしまいます。
さらに、時間の見当識障害により、時間経過がわからなくなったり、時間配分ができなくなります。
また認知機能障害もあるので、判断力が低下し、デイサービスの迎えが来るまでにやることの優先順位をつけることも難しくなります。
時間に間に合わせるように仕向けるより大切なこと
では、認知症の人が時間内に準備をするためにはどうしたらいいのでしょうか?
認知症になると、記憶障害や見当識障害が出現します。そのため時間通りに準備することができなくなりますが、そこを注意しても、認知症によるものなので、直しようがありません。
ですから時間に間に合うようにケアを提供することです。
このような場合、例えば、
・手順を紙に書いて貼っておく
・その人に合った方法で行動を促す
などの記憶障害に対するケア
・時間経過がわかる時計の利用
・優先順位や時間を示した時計型のスケジュール
などの見当識障害に関するケア
などの記憶障害や見当識障害を補うケアを行うことが必要です。
しかし、障害を補うケアよりも大切な事があります。
それは相手の認識を知ることです。
・なぜ、同じことを繰り返すのか?
・なぜ、身だしなみに時間がかかるのか?なぜ何度もクリームをつけるのか?
その行動はなぜだろう?どんな意味があるのだろう?どんな背景があるのだろう?と認知症の人の認識を知ることが重要です。
認識はいわば行動の原因です。原因が違えば対応方法も違います。
どのような認識を持っているかによって、かける言葉も変わってくるのです。
なので、相手の認識を知ったうえで障害を補うケアをする必要があるのです。
認知症介護を楽にするためには認知症の人から見た世界を知る必要がある
認知症の人の症状に適切な対応ができないと、認知症の人との関係性が悪くなります。
また認知症の人のストレスが過大になると、BPSDと呼ばれる症状が出現してしまうこともあります。
そのような事を防ぐためにも、認知症とはどのようなものなのか?
なぜその行動を起こすのか?
どんな認識があって、どんな認知機能障害があるのか?
など認知症の人から見た世界はどのようになっているのか?を知っておく必要があります。
これがわからないから、介護するときにイライラしたり、どうやっていいのかわからないのです。
認知症の人の頭の中や、認識がどのように変化するのか?を知ることができれば、認知症になった方への適切な対応やコミュニケーションをとることができます。
考え方さえわかれば、一定の症状だけではなく、他の症状に応用することもできます。
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