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「散歩に行って帰ってこれない」「孫のことがわからない」認知症の症状『見当識障害』とは?

認知症の症状「見当識障害」

「時間にあわせて準備ができない」

「近所に散歩に行って迷子になる」

「離れて暮らす孫のことがわからなくなった」

認知症のセミナーをやっていると、このようなことに対して、なんででしょうか?どうしたらいいのでしょうか?といった質問をいただくことがあります。

実はこれ、見当識障害と呼ばれる認知症の中核症状によって引き起こされる現象です。

関連記事:認知症の症状

「見当識障害」という言葉は何となく聞いたことがあっても、なぜ見当識障害がおこるのか、見当識障害がおこるとどうなるのか、見当識障害はどういった症状に関係してくるのかなどはあまり知られていません。

見当識障害により出現する困りごとも様々ですが、理由がわからないと、適切な対応ができません。

このブログでは、この見当識障害がなぜおこるのか、おこるとどうなるのかについてお伝えします。

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見当識障害とは

見当識とは、現在の年月や時刻、自分がどこにいるか、だれといるかなど基本的な状況把握のこと。自分が置かれている状況を認識する能力のことです。

見当識には時間の見当識場所の見当識人の見当識があります。

その見当識が障害される(うまく機能しない)ことにより、時間や空間、人を認識する能力が低下します。

私たちが何から見当をつけているのかというと、経験や、情報とその情報の選択・判断です。

認知症になると情報が持つ意味を忘れ、その情報をどう判断していいのかわからなくなります。

また記憶注意能力障害され、見当識障害につながります。

見当識障害は「時間」「場所」「人」の順に現れます。

今がいつだかわからない「時間」の見当識障害

私たちが、

・一定の時間を待つ
・時間で行動する
・今が何年、何月何日、何時がわかる
・その時間帯にやることができる(例えば朝起きるなど)
・季節に合った服を着る。

このようなことができるのは時間の見当識があるからです。

時間の見当識障害があると、

●経験や出来事の時間軸がわからない
時間感覚がわからなくなり、「長時間待つ」とか、「予定に合わせて準備する」ことができなくなります。
参考:コトバンク「時間軸」 

●今現在の年月日などがわからない
認知症の進行により、時間感覚だけでなく日付や、日時、季節、年次におよび、今現在の年・月・日あるいは、時間や季節がわからなくなり何回も今日は何日かと質問したり、季節感の無い服を着る、自分の歳がわからないなどが起こります。

経験や出来事の時間軸がわからない

時間感覚が変化し、時間軸がわからなくなります。

例えば、朝8時に起きたことがわからなければ、今 何時かわかりません。

起きてからどのくらいの時間が流れたのかを覚えていなければ、今 何時かはわかりません。

時間の感覚や時間軸は出来事を始めてからどのくらい時間が流れたのかを把握している必要があります。

出来事を始めてからどのくらい時間が経過したのか(記憶)と時間を把握する情報は何か(情報の選択と判断)がわからないと、時間感覚や時間軸がわからないのです。

だから、今 8時で9時まで待っていてと言われた場合、

・「今が8時である」とわかる
・「9時までは1時間ある」とわかる
・「9時まで待つ」ということを憶えていられる
・「1時間がどのくらいか」がわかる
・時計から情報を読み取れる
・時計から情報を判断できる
・8時からどのくらい時間が経ったのかがわかる
・9時までどのくらい時間が残っているのかがわかる
・8時からどのくらいの時間が経っているのかを把握できる

このようなことがわかる・できないと、9時まで一人でじっと待つことができません。


何度も「今何時?あとどのくらい?」と何度も聞いたり、逆に9時過ぎても待っているということになります。

このように時間感覚がわからない、時間軸がわからないと、長時間待つとか、時間の予定通りに準備をする(「9時までに準備をしておく)など)ができなくなります。

今現在の年・月・日あるいは時間や季節がわからなくなる

なぜ今現在の年月日や時間、季節がわかるのかというと、情報の選択・判断ができるからです。

この情報の選択・判断は、記憶から成り立っています。

記憶の障害により情報の選択・判断ができなければ、今の年月日・時間、季節はわかりません。

世の中にあふれている情報の中から、季節を知るにはどの情報が必要なのかがわからないと、季節がわかりません。

年月日も同じです。世の中にあふれている情報から、年月日を知るにはどの情報が必要なのかわからなければ、年月日はわかりません。

だから、今の年月日・時間・季節がわかるためには、

・「時計が何を示しているのか、時計の持つ意味」がわかる
・時計を読める
・「カレンダーが何を示しているのか、カレンダーの持つ意味」がわかる
・カレンダーを読める
・季節の情報(例えば桜吹雪・紅葉、ひな祭りなど)がわかり、そこから季節を予測することができる。
・手に入れた情報から正しい情報を選択・判断することができる
(例えば私たちは、カレンダー上で4月でも、外に出たら紅葉があったら、カレンダーが間違えているという判断をすることができます。)

これが時間の見当をつけるということです。

このようなことができないと、現在の年月日、時間、季節の見当をつけることができなくなります。

ですから、今日は何月何日?と何度も聞いたり、今何時?と何度も聞いたり、季節に合わない服を着ていたりするのです。

このように、時間に関する情報を選択・判断できないと今現在の年・月・日あるいは時間や季節がわからなくなります。

時間の見当識障害とひとくちに言っても、時間がわからなくなる原因は様々です。

ですから、時間の見当識障害がある場合、どこが原因なのかを知り、それに合った対処法をしましょう。

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ここがどこだかわからない「場所」の見当識障害

私たちが、
・今いる場所がわかる
・目的地に行く事ができる

このようなことができるのは場所の見当識があるからです。

場所の見当識障害があると 
●自分が今住んでいる場所や、今いる場所がわからなくなる。
どこにいるのかわからないので、家にいても、家に帰ると言ったり、よく行っていたなじみの場所でも、どこだかわからなくなります。

●自分と目的地の位置関係がわからなくなる。
位置関係がわからないので、遠距離の親戚の家に、「すぐ近くだから行く」といったりする。自宅を見れば自宅とわかるが、自宅に帰る道がわからなくなどがおこります。

自分が今住んでいる場所や、今いる場所がわからなくなる

私たちがなぜ今いる場所がわかるのかというと、情報の選択・判断ができるからです。

この情報の選択・判断は、記憶から成り立っています。

記憶の障害により情報の選択・判断ができなければ、今いる場所がわかりません。

世の中にあふれている情報の中から、自分の今いる場所を知るにはどの情報が必要なのかがわからないと、今いる場所がわかりません。

だから、今自分がいる場所がわかるためには、

・そこにある建物、風景を認識できる。
・そこにある建物、風景を記憶している。
・周辺の状況から情報を読み取れる。
・周辺の状況から場所を判断できる。
・自分がその場所にいる理由や至った方法がわかる。

このようなことがわかる・できないと、自分が今いる場所がどこなのかがわかりません。

家にいるのに、「家に帰る」と言ったり、よく知っていた場所なのに、ここはどこ?と聞いたり、自分の家の中でもトイレがわからないという状態になります。

いうなれば、
もしあなたが、タイムマシンに乗って、100年後の同じ場所に行ったとしましょう。ただしどこに着くのか、あなたは知らされていません。

100年後なので風景は大きく変わっています。知っている建物もありません。その場所の変遷もわかりません。

そうなったら、今自分はどこにいるのか、わからないですよね?

そんな感じです。

目的地までたどり着けない。

私たちがなぜ目的地にたどり着けるのかというと、自分と目的地の位置関係がわかり、進む方向がわかるからです。

私たちは目的地に行くとき、どのようにしたら目的地に辿り着けるのかを少なからずイメージしています。

知っている場所なら記憶を頼りに、現在地からどの方向に進めばいいのかわかります。大阪に行くのに東北新幹線に乗る人はいません。

知らない場所なら、地図を調べたりして何となくでも道筋を把握します。

行く方法が全くわからないのに、目的地に行こうとは思いません。

記憶や情報から、目的地は大体どの方角なのか、どの方向なのかなど、自分と目的地の位置関係は何となくわかります。よく知っている場所ならなおさらです。

目的地に行く場合、
・自分が今どこにいるのかわかる
・目的地がどこなのかわかる
・目的地は自分から見てどの方向なのかわかる。
・目的地に行くためにはどのような道順(プロセス)を通るのかわかる
・自分と目的地の位置関係がわかる
・周辺の状況から自分と目的地の位置関係の情報を読み取れる
・周辺の状況から自分と目的地の位置関係の情報を判断できる


このようなことがわかる・できないと、現在地から目的地にいくことができません。

どこかに行こうとして迷ってしまったり、出かけたはいいものの、家に帰れなくなってしまうということになります。

認知症になり、脳が萎縮すると、空間認識能力が低下します。空間認識能力が低下したり、記憶が障害されると、自分が今いる場所がわからなくなり、自分と目的地の位置関係もわからなくなってしまうのです。

場所の見当識障害と言っても、場所がわからなくなる原因、外出して戻ってこれない原因は様々です。

ですから、場所の見当識障害がある場合、どこが原因なのかを知り、それに合った対処法をしましょう。

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あなたは誰?「人」の見当識障害

私たちが、
・相手が誰だかわかる
・相手との関係性がわかる

このようなことができるのは、人の見当識があるからです。

人の見当識障害があると、

周囲の人(相手)が誰なのかがわからなくなる。
記憶障害により、相手が誰なのかわからなくなり、よく知っていた人でも「どちら様ですか?」と言ったりします。
進行すると家族の顔を見ても、夫であるとか、妻である、子供であるといった認識がなくなります。

周囲の人(相手)との関係性がわからなくなる。
相手が誰なのかわからないので、その人との関係性もわからなくなります。また自ら人間関係を築くのも難しくなります。

周囲の人(相手)が誰なのかがわからなくなる

私たちは、物理的に離れていても(日本とアメリカなど)、友達との関係を継続することができます。

それは、友達がどういう人物なのか覚えていて、忘れないから。あっていなくても、見えなくても、相手を自分の中で記憶しているからです。

また、久しぶりに会って、相手の容姿などが変わっていても、様々な情報から(例えば声など)相手が誰なのかを推測したり、特定することができます。

ところが認知症になると、記憶障害があります。そのため、会う頻度が少ないと、いくら仲良くしていた人でも、いくら家族でも、それが誰だかわからなくなってしまうのです。

会う頻度が高ければそれだけあった時に相手のことや相手との関係を思い出す。顔を見た時にああ、〇〇さんと思える。繰り返すことで、記憶を保つことができます。

しかし、会う頻度が少ないと、その人の心の中に占める割合が少なくなります。思い出すことが少なくなると、記憶の回路は切れてしまうので、誰だかわからなくなってしまうのです。

このようなことから、人の見当識は、関係や物理的距離が遠い人→近い人の順でわからなくなっていきます。

だから、久しぶりに孫が家に遊びに来た時に、孫とわかるためには、

・孫の顔を覚えている
・孫の年齢による変化(成長)についていける
・相手が誰なのかを知るために必要な情報の選択・判断ができる
・相手が誰なのかを推測したり特定したりするために情報収集できる

こういったことができないと、久しぶりに会った孫を孫と理解するのは難しくなります。


記憶の障害により、相手の顔を覚えていない、情報の選択と判断が出来なければ相手が誰かがわかりません。

ですから久しぶりに会う孫に対して「あなた誰?」と何度も聞いてしまうのです。

周囲の人(相手)との関係性がわからなくなる。

私たちの人間関係は、どの人が誰であるかという人の記憶と、その人との関係性がどうであるかという記憶によって成り立っています。

また、その人が誰であるのかがわからなければ、その人と自分との関係がどのような関係なのかがわかりません。

マスクをかぶり、声を変えた知り合いに声をかけられても、誰だかわからなければ怖いだけですよね?話しかけられても、無視をするでしょう。

その人が誰だかわかるから、関係性ができる。人間関係があるから、話をしたり、遊んだり、一緒に何かをしたりできるのです。

人間関係があるから、社会とつながっていられるのです。

だから、周囲の人との関係を保つためには、
・周囲の人の顔を覚えている
・周囲の人の変化についていける
・関係性を保つための情報を読み取れる
・関係性を保つための情報を判断できる。
・周囲の人との関係性がわかる。

このようなことができないと、古くからの知り合いでも無視をしたり、訪問介護のヘルパーさんを浮気相手と思ったり、家にいる久しぶりに帰ってきた家族を泥棒呼ばわりしたりしてしまいます。

また、人間関係を保つのが難しくなったり、自ら人間関係を作るのが難しくなるので、孤独になってしまいます。

ただ、顔を見て人物を推測・特定できなくても、名前がわかれば、その名前から関係性を思い出す場合もありますし、わかっても関係性を思い出せない場合もあります。

記憶障害によりずっと誰だかわからない場合もあります。


このように記憶が障害され、相手が誰なのかわからないと、相手との関係がわからなくなります。家族の顔を見ても、夫である、妻である、子供であるといった認識が無くなります。

相手とどのように付き合っていいのか、わからなくなります。

ですから、人の見当識障害がある場合、誰だかわからないのか、それとも誰だかはわかるけど、どのような関係性なのかがわからないのか、名前など情報があれば関係性を思い出せるのかなどを見極め、それに合った対応をしましょう。

まとめ

「今がいつかわからない」「ここがどこかわからない」「相手がだれかわからない」などといった見当識障害。

「見当識障害」という言葉は何となく聞いたことがあっても、なぜ見当識障害がおこるのか、見当識障害がおこるとどうなるのか、どんな現象がおこるのか、見当識障害はどういった症状に関係してくるのかなどはあまり知られていません。

見当識障害により出現する困りごとも様々ですが、理由がわからないと、適切な対応ができません。

認知症に関する困りごとを解決するためには、症状を知るだけでは足りません。それでは実際の生活の中の困りごとに対応できないからです。

ではどうしたらいいのか?

それは、なぜその症状、現象がおこるのか?といった原因を知り、その症状によって生活はどのように変化するのか?を理解することです。

原因を知り、生活の変化を理解するには、認知症を学ぶことが大切です。

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介護者も認知症の本人も症状に振り回されず、自分らしく暮らすためには、認知症や認知症介護の知識が欠かせません。

認知症の知識が無ければ、介護疲れから、怒るかもしれません。

しかし怒ったところで症状は改善されませんし、それどころか、多くの場合は症状が悪化します。

また、誰でも認知症になる可能性はあります。

あなたも認知症になるかもしれません。

その時に介護する側に知識がなければ、このような不適切なケアを受けるかもしれません。

自分が介護するときだけではなく、もし万が一自分が介護される側になったとしても、自分らしく生きるためにも、認知症の知識を身につけ、認知症に備えておきましょう。

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