病院受診をする時、何をどういえばいいのかわからず、とりあえず時系列で話してみたり、わかりやすいだろうと、とりあえず本で見た専門用語を使ってみたりしたことはありませんか?
このような方法だと、医療者にとって、「どんなことに困っているのか」や、「どうしてほしいのか」が伝わりにくく、その結果望んでいた治療方針とのずれが生じたり、お互いの不信感につながることがあります
それを防ぎ、置かれている状況を的確に説明し、適切な治療や介護につなげるための病院受診のポイントについてお伝えいたします。
では適切な治療や介護につなげるための病院受診のポイントとは何でしょうか。
それは・・・
◆症状名ではなく、状況を説明する
◆以前との変化を説明する
◆本人をないがしろにせず、本人を中心に話をする
このような事があげられるでしょう。
症状名ではなく、状況を説明する
例えば「昼夜逆転があります」と言っても、それによって本人や家族の生活が、どう変化しているのかがわかりません。
「失禁して困るんです」と言っても、どのように本人や家族が困っているのかがわかりません。
ですので、症状名で言うのではなく、具体的にどのような状況なのか、どのように生活が変化したのか、説明する必要があります。
例えば、「最近、物忘れがあって困ります」といった場合、買い物の途中で何を買うのか忘れてしまって困るとか、いつも行っているスーパーがどこにあるのか忘れてたどり着けないのかでは、違います。
ですから症状名で言うのではなく、どのような状況でどうなっているのかを説明しましょう。
その為には付箋やメモを活用するといいでしょう。病院で話そうと思っていても、実際受診するときには忘れてしまったり、まとまっていなかったりします。
何か気になる状況があった時、その状況をメモし、受診の時にまとめることで、スムーズに話せるようになります。
また、上手く状況を説明できないような場合、動画を撮って見てもらうのもいいでしょう。
以前との変化を説明する
初めて病院にかかる場合
初めて病院にかかる時には、病院受診を決めるきっかけとなる前との変化を説明しましょう。その場合も前述のように、具体的な状況を説明しましょう。
継続して病院にかかる場合
継続して病院にかかっていると、薬を増量、減量したり、やめたり新しい薬を始めたり、また新しいリハビリを始めたりするかも知れません。
そのような時はぜひ、変化をよく観察しましょう。
病院にいる医師やそのほかの医療関係者は状態が少しでも良くなるように、治療方針を考え提供しています。
提供する内容を変えたことでどのような変化があるのか、その変化を受けて次はどのようにしたら最適なのかを考えています。
ですから、提供する内容を変えた前後で、状況に変化があったのか、もしあったとしたらどのような変化なのかを次の外来の時に説明しましょう。
もちろん良い変化だけではないかもしれません。悪い方向に変化する場合もあります。それも包み隠さずに報告しましょう。
変えたことで何か気になることがあれば、メモをして受診の時にまとめて報告しましょう。
※変更した内容によっては、すぐに成果が出るものと出ないものがあります。
本人中心に話をする
認知症の人を介護しているとどうしても、介護者が返事をしてしまうことがあります。それは、介護者が話をしたほうが早いという理由もあるでしょうし、本人ではわからないからという理由もあるでしょう。
そのような理由があるのはわかりますが、必ず本人も交えて話をしましょう。
時間がかかるからとか、わからないからとかという理由で本人をないがしろにすると、本人は気づきます。気付いて心が傷つきます。尊厳が傷つきます。
自分のことなのに、自分が蚊帳の外で話をされていると誰でも気分が悪いでしょう。
人によりますが、認知症の初期~中期であれば、時間をかけたりコミュニケーションを工夫することで話を理解したり判断したりすることもできます。できるだけ本人の意思や意見、考えを尊重しましょう。
本人の前では言えないような状況がある場合は、本人がいないところで話しましょう。
誰でも自分が失禁をしたことを言い触らされている場面を目の当たりにして嬉しい人はいないからです。
認知症が進行して本人には話の内容がわからないだろうと思って話をしても、非言語的コミュニケーションといって、言葉以外のところで伝わってしまいます。
ですから、そのような話は、本人が席を外した時(例えば検査に行っているとき等)に話をしましょう。医師が忙しいようなら診察の前後に手紙を渡したり、看護師に話すのもいいでしょう。
このように、本人と一緒に相談する話と、本人の居ないところで相談する話をわけましょう。
まとめ
もちろん病院や医師によって欲しい情報は多少変わるかもしれませんが、このようなポイントを押さえて病院受診をすることで情報のすれ違いや伝え忘れてしまうことがなくなります。
情報のポイントを絞って伝えることで、医療者側からしたら、適切な治療につながりますし、どのように在宅での生活を送ればいいのかの助言などをすることができます。
認知症の人も家族も心穏やかに生活するための第一歩としてぜひお役立ていただけたらと思います。