認知症初期では、一人暮らしをしていたり、日中一人で過ごすこともできます。しかし、自分で体調を管理することは難しい場合も多々あります。
夏ならば、熱中症にならないように、「冷房を入れて」とか「水分をとって」と説明しても、認知症の初期の時は、自分の認識が変化しているとは思っていないので、アドバイスをなかなか聞いてくれませんし、生活の方法(冷房や水分摂取)について怒っても、関係性が悪化するだけという問題もおこると思います。
真夏に汗をかいて、「暑い、暑い」そう言っているから「冷房をつけて」と言うと「わかった」と返事をする。
でも実際は、冷房をつけず暑さ対策を何もしなかったり、扇風機だけで過ごしていることも。
また、「わかった」とエアコンをつけていても、暖房が入っていることもある。
このようなことがあると、熱中症で倒れたらどうしよう?と家族としては心配になりますよね。
なんで冷房つけないの?
真夏で「暑い」と言っているのに、汗をかいているのに冷房をつけない、水分をとらない。
「扇風機があるからいい」と言う
一度このようなことがあると、「真夏だから冷房付けて」と言っても、同じようなことがおこる可能性が高いです。
認知症になる前は、夏には冷房をつけたり、熱中症に注意して生活していても、認知症の発症や進行により、生活様式が変わったり、自分の体調を管理することが難しくなってきます。
環境と体調が結びつかない。
「暑いんだったら冷房を入れてよ」そう言いたくなる気持ちもわかりますが、そう言っても、冷房を入れない可能性はあります。
なぜなら、体調が悪くなっても、気温が高いせいだと思わないからです。
不快である=暑くて体温が上がっているからとわかりません。
原因となる要因と体の状況が結びつかないのです。
そうは言っても、真夏なんだから、冷房を入れないと熱中症になることくらい予測できるでしょ?と思うかもしれませんが、認知症の進行により、今の季節がわからなくなります。(時間の見当識障害)
私たちは、体調が悪いとか、体が不快な時、その原因となる要因(病気などの内的要因や気温などの外的要因)を取り除くことで、対処します。
ところが認知症が進行すると、原因となる要因と体の状況が結びつかず、原因を取り除くことが、自力では出来なくなってしまうのです。
自分では環境を整えることができなくなってしまうのです。
対応のポイント
この場合は、暑いから体調が悪くなると言っても結びつかないので、本人の状況に合わせて、周りの人が室温をコントロールする環境を整えましょう。
日中だけ一人であれば、家族が朝、冷房をつけたまま出かけて、近所の人にお願いしたり、介護サービスを利用して、見に来てもらう。
一人暮らしであれば、介護サービスを利用して、冷房を入れておいてもらうとか、冷房のある場所(デイサービスなど)を利用する。
1日中冷房を入れておいた方が良い環境なら、冷房を入れっぱなしにして、リモコンから操作ができないようにするのもいいでしょう。
そうすることで、冷房をつけていたはずなのに、いつの間にか暖房に切り替わっていたという状況を予防することもできます。
また今は、遠隔操作できる家電やアプリがありますので、それを使うことで、日中一人でも、一人暮らしでも、周りの人が環境をコントロールしやすくなります。
まずは本人の体調管理を優先しましょう。
認知症になると、原因となる要因と体の状況が結びつかなくなってきます。
だから体調が悪くなっても原因を取り除くこと、対応することが難しくなります。
でも「なんで(原因が)わからないの?」と言っても、わからないものはわからないし、そんなことを言われたら本人のプライドが傷つき、関係も悪化します。
このような状況で家族が心配するのは、暑くて熱中症になること。
その心配の根本的な原因は、認知症の人が自分で不快の原因が取り除けないこと(環境が整えられないこと)です。
周りの人が環境を整えることで、体調管理ができ、本人も周りの人も安心することができるでしょう。
まとめ
認知症の人は、暑いという感覚が無くなっているから冷房をつけないわけではありません。暑いという感覚はあっても、『暑いから不快』『暑いから体調が悪い』といったことが結びつかなくなります。
暑いけどなにもしない、のではなく、暑くてもどうしていいのか、わからないのです。
何をどうしたら不快→快適になるのかが、認知症によりわからなくなるのです。
認知症の人の熱中症を防ぐには、常に一緒にいて、温度を管理することですが、仕事もあるし、自分の用事もあるし、それぞれの事情もあるしで、常に一緒にいるのは難しいでしょう。
ですから、認知症の人が環境を整え、体調管理ができるような工夫を知り、真夏に備えましょう。