買い物に行っていても何を買いに来たのか忘れてしまう。
買い物に行ったはいいけど、肝心なものを買わずに、余計なものを買ったことを家に帰ってから気づく。
買い物に行って、家にあるものを買ってしまう。
このようなことが何度か続くと、認知症かしら?と心配になりますよね。
あと3年後の2025年には5人に1人が認知症になるといわれ、テレビや雑誌などのメディアでも、毎日のように認知症の話題を目にします。
このように認知症の情報が沢山あると、自分が認知症になったらどうなるのだろう?家族に迷惑を掛けたらどうしよう?と心配になっている人も多いのではないでしょうか?
認知症介護でおこる困りごとには様々なものがありますが、そのうちの一つである、食事を食べてくれない、食事を拒否するという相談を受けることがあります。
食事は生命につながっているので、認知症のお母さんが食事をとってくれないとなると、家族はとても心配しますし、困ってしまいます。
そのような事態にならないためにもこの記事では、あなたが万が一認知症になったとき、食事を拒否しないための今からできる対策についてお伝えします。
説得されても逆効果
認知症になって、食事を拒否するようになると、家族は、なだめたりすかしたり、怒ったり説得したりして、あなたに食事を食べてもらおうとするかもしれません。
家族としては、大切なあなたが食事をとらなくなったら心配だからです。
しかしそのように説得されても、あなたは食事をとらない可能性のほうが高いですし、このような説得が続けば、認知症の進行が早まったり、他の困った症状がでる可能性もあります。
相手の価値観で決定される可能性も
あなたが認知症ではなければ、周りが納得できるように食事を食べたくない理由を説明することができます。
またどうしたら食べられるようになるのかも説明できます。
その説明によって、周りも納得できるでしょう。
また食べたくないとしても、食べたほうが良い正当な理由で説得されたら、耳を傾け、場合によっては代替案を出したりして食べることができるかもしれません。
なぜなら、自分で自分のことをコントロールできると周りから思われているし、実際、多くの人は、生きるために必要なことを選択し、行動できるからです。
だからこそ、あなたの食べたくないという要求も周りは認めてくれます。
しかし、認知症になると、自分のことをうまく伝えられなかったり、表現できなくなります。
その為、周りから見たらわからなくなってしまったように見え、あなたの気持ちを無視して、食事の内容や方法などを家族や相手の価値観で動かされる、決定される可能性があります。
これって、認知症じゃなくても嫌ですよね。
もちろん認知症になっても嫌なのですが、認知症になると、食べたい食事や環境を、自分の気持ちをうまく表現できないので、食事を拒否するなどの行動となって表れるのです。
自分の好きな食べ物を記しておくことで自分も家族も楽になる
認知症になって食欲はあるのに、食事を食べたくないというとき、嫌いなものや食べにくいもの、食べにくい環境であることがあります。
言い換えれば、自分の好きな食べ物、好きな方法、環境で食べれば食べられるということです。
なので、自分が認知症になって、食事を拒否して家族や周りに迷惑をかけたくないとか、周りの価値観で食事を決められたくないと思うのなら、自分の好きな食べ物、好きな食べ方、環境を自分のトリセツに書いておきましょう。
そんなことしなくても、家族だからわかると思う。そう思われるかもしれませんが、それは間違いです。
なぜなら実際の介護現場で「本当に好きな食べ物を知らないんです」という家族はたくさんいるからです。
このように多くの場合、家族や介護者はあなたの好きな食べ物、好きな方法を知らないことが多いので、どうやったら食べてくれるのかわからず困ったり、理論で説得を試みたりして、途方に暮れることもあるでしょう。
そうならないためにも、自分のトリセツとして食事ついて書いておきましょう。
食事に関してトリセツに書いておきたいこと
自分の好きなもの、すきな食べ方
・若いとき食べて好きだったけど、子供の手前食べられなかったもの、例えばコーラとハンバーガーなど
・子供にあげるため、自分は大好きでも我慢していたものなど
・子供のしつけのために、きれいに丁寧に食べるようにしていたけど、実はかぶりつく方が好きなど
こういった食にまつわる思い出を自分のトリセツに書いておきましょう。
自分の嫌いなモノ、嫌いな食べ方
・子供の手前、嫌いだと言えなかったもの、例えばピーマンやしいたけなど
・マナーを指摘されながら食べるのは嫌だなど
出来たら(好きな食べモノ、嫌いな食べ物、好きな食べ方、子供や若いころに嫌だった食べ方の)その理由も書いておくといいでしょう。
例えば、
●赤飯は特別食で、うれしかった
●運動会の時は必ず母がいなり寿司を作ってくれてうれしかった、沢山食べた。
●反対に小さいころかぼちゃを一生分食べたので、もうかぼちゃは見たくない
などです。
このように食にまつわる良い感情・悪い感情、どちらも書いておきましょう。
そうするともしあなたが食事をとれなくなった時、家族や周りはなぜ食べないのかという理由や、どうしたらいいのかの大きなヒントになり、良い介護につながっていきます。
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大切なのは自分の価値観とポジティブな感情
認知症になり認知機能が低下すると、記憶力や判断力、理解力が低下し、理屈で食事をすることが難しくなります。
例えば、肉より魚の方が体にいいから、魚を食べなさいなど言われても、その理屈自体がわかりません。
野菜に含まれるビタミンがどうのこうの言われても、ピンときません。
食べないと体力が回復しないといわれても、わかりません。
それよりも、自分の好き、嫌い、美味しい、心地よい、などの感情や価値観で食事をすることになります。
美味しいとか嬉しいとか楽しいとかそういったポジティブな感情を持ったものを食べたい。
ポジティブな感情になれば、食事も進む。
逆にネガティブな感情がある食事だるいとか、まずいとか嫌いとかそういったことはしたくなくなる。
家族が心配して説得したり、食事の準備をしてくれても、ネガティブな感情を持てば食べたくないし、拒否する。
だから食事の時にポジティブな感情を持てるようにあなたの食事に対する価値観・感情を自分のトリセツとして残しておく必要があるのです。
まとめ
実際、ご飯を食べなくなった認知症の人に好きなものを食べてもらおうと思っても、何が好きなのかわからないという家族も多くいらっしゃいます。
そうすると多くの場合、介護者の価値観で食事を提供されてしまいます。
そうすると自分も周りも悲劇です。
家族はあなたの価値観がわからないまま、食べて欲しいと思って一生懸命食事を準備するのに自分は好きなモノしか食べられない。
このように大切に思っている気持ちがすれ違ってしまうのです。
ですから、自分のためだけではなく、家族のためにも、自分のトリセツを残しておきましょう。
このようにトリセツを残しておくことで、あなたの「家族を大切にする想い」も家族にも受け継がれていくのです。