自分の家族には介護は関係ない。大抵の人がそう考えているかもしれません。
ところが、介護は急にやってくることがあります。
実は75歳以上では608万人、3人に1人の割合で介護が必要(要介護者)です。
いままで、介護なんて考えたことがなく、介護について何も知らない場合、急に介護が必要になっても、どうしていいのかわからない。
どこに相談したらいいのかもわからず、パニックになるかもしれません。
介護が必要になったとき、正しい情報や方法を知らないと、介護される側も介護する側も生活の質が下がってしまいます。
このブログでは、介護が必要になったとしても、生活の質を下げないための情報をお伝えします。
介護が必要になる主な病気
介護が必要になる主な原因
1位ー認知症
2位ー脳血管疾患
3位ー高齢による衰弱
4位ー骨折・転倒
このように、何も特別な病気でなくとも、誰でも要介護状態になる可能性があるのです。もし、該当する病気や傾向があるならば、介護に備えておきましょう。
介護が必要になった主な原因についてみると、「認知症」が18.7%と最も多く、次いで、「脳血管疾患(脳卒中)」15.1%、「高齢による衰弱」13.8%、「骨折・転倒」12.5%となっている。また、男女別にみると、男性は「脳血管疾患(脳卒中)」が23.0%、女性は「認知症」が20.5%と特に多くなっている。
平成30年版高齢社会白書(全体版) – 内閣府
介護の準備
もし、入院していて、退院後介護が必要になりそうなら、早めに準備しておきましょう。
入院していなくても、認知症と診断されたら早めに準備しておきましょう。
ここでいう準備とは、介護の情報の準備と介護資金の準備です。
民間の生命保険に入っているなら、手続きや給付条件、金額を確かめておきましょう。
高額医療の場合や病院からすぐに施設に入居する場合など、多額の現金が必要になる場合があります。そのときに慌てないためにも早めの準備が必要です。
情報を集めないまま慌てて行動してしまうと、様々な面で損をすることがあります。
ですから早めに介護に関する情報を集め、いつでも動けるようにしておきましょう。
家での介護が必要になったら
介護が必要になった場合、介護をするためにはいくつかの選択肢があります。
① 介護保険を利用しないで、自宅で介護する
② 介護保険の居宅サービスを利用して自宅で介護する
③ 介護保険施設に入居する
④ 民間の施設に入居する
⑤ 介護保険外のサービスを利用する
①と⑤以外は、介護保険を利用することになります。
介護保険等、サービス利用のポイント
介護保険や自治体のサービスは、要介護度が軽いうちから少しでもいいので、利用しておきましょう。
なぜなら「外部のサービスは便利だ」と認識しておくと、もっと介護が必要になった時にスムーズにサービスを導入したり、増やしたりすることができるからです。
また、社会から孤立することを免れます。
高齢者の中には、人に頼むとか、誰かの世話になるとかを「迷惑をかける」と思ってしまい、家族だけで解決しようとする人がいます。
それが老々介護だったり、家族の誰かが犠牲になる介護になってしまうと、結局は要介護者も介護者も不幸になってしまうことがあります。
ですから、早い段階から外部のサービスを利用しておきましょう。
介護保険を利用する
介護保険は特定の病気であれば40歳から利用することができます。65歳を過ぎると、原因となる病気の種類に関わらず、利用することができます。
介護保険の概要と流れ
最初の相談窓口
病院に入院しているのなら、病院の中の「地域連携室」などにいるMSW(メディカルソーシャルワーカー)に相談すると退院してからの調整をしてくれます。
退院後、もしくは通院していて介護が必要になってきたら、役所の窓口や「包括支援センター」に相談すると、介護保険利用の手続きを教えてくれたり、地域の居宅介護支援事業所を紹介してくれるでしょう。
認定申請
医療保険と違って、介護保険サービスを利用するときには、認定申請をして、要介護度が決定してから、介護保険サービスを利用することができます。
認定申請に必要なもの
●要介護(要支援)認定審査書
●介護保険被保険者証
●マイナンバー
●身分証明書
認定申請は、要介護者が住んでいる市区町の窓口に申請し、家族でもできますが、居宅介護支援事業所等でも代理で行うことができます。
認定調査
要介護度を判定するために、認定調査を行います。調査時間自体は1時間程度で、市区町村が定めた認定調査員が自宅などに来て、本人や家族に問診したり、本人の実際の動きなどを見て行います。
一次審査はコンピューター判定、二次審査では、コンピューターではまかないきれない部分を、委員会で話し合って、要介護度を判定します。
主治医意見書
要介護認定を受けるためには、主治医の意見書が必要です。もし、かかりつけの医師がいないとか、何らかの理由でかかりつけの医師で書いてもらえない場合には、市区町村で定めた医師に意見書を書いてもらうことになります。
かかりつけ医
何らかの病気があるなら、かかりつけ医やかかりつけの病院をつくっておいた方が、継続して診てもらうことができ、介護度があがっても心配はないでしょう。
特に認知症があると、身体疾患(例えば糖尿病など)が悪化した時や認知症の症状が急にひどくなった時に、新しい医師・病院などの新しい環境に慣れることができない可能性があります。
要介護認定判定
認定調査から約1ヶ月程度で要介護度が決定します。軽い方から自立、要支援1~2、要介護1~5にわけられます。
要介護度に応じて受けられる介護サービスの種類や内容、利用料が決定します。
介護保険サービスについて
介護保険サービスは、要介護度に応じて、使えるサービス内容、種類、料金が異なります。
ケアマネジャーとケアプラン
要介護度が決定し、要支援や要介護になると、居宅介護支援事業所のケアマネジャー(居宅介護支援専門員)が要介護者や家族の要望も取り入れつつ、自立した生活を営むための「ケアプラン」を作成し、それにのっとって介護サービスを利用することになります。
介護保険事業の種類
・居宅サービス
自宅を拠点として介護サービスを利用する
訪問介護、通所介護、ショートスティ、など
・介護施設
施設に入所して介護サービスを利用する
特別養護老人ホーム、有料老人ホームなど
・福祉用具貸与
車椅子やベッドなどの福祉用具のレンタルやメンテナンス
・住宅改修
手すりの取り付けなどの住宅改修を行った場合、住宅改修費の9割が戻ってくる制度
※利用者は、住宅改修の支給申請書類の一部を保険者へ提出 ・保険者は提出された書類等により、保険給付として適当な改修かどうか確認する。
※限度額20万円原則1回まで
家族だけで決める前に、専門家に相談することで、制度を有効に使えることがあります。
自宅で介護する場合
介護サービスを導入しても、それ以外の時間は、家族が介護することになります。
体の一部や全部が動かなくなったら、日常生活を送る上で、介助する必要が出てくる場合があります。
しかし、できないからと言って、介助者がすべて介助してしまうと、残っている機能を低下させることにもなりかねません。
身体の介助の方法や介護の方法を知っておくと、体に負担をかけず、残っている機能の低下を防ぐことができます。
介護の負担を減らす
日常生活に介助が必要な状態になると、介護者は今までとは違う要介護者に戸惑ったり、介護のために体の負担が増えるでしょう。
しかし、要介護者も今までとは違う「できない自分」がもどかしくてイライラしたり、ふさぎ込んでしまったり、焦ってけがをしたりすることがあります。
慣れない介護は、心身ともに疲れます。介護の負担が一人だけにかかっている場合はさらに大変です。介護者が辛いと、介護される方も辛くなり、悪循環になります。
私はよく、介護は面ではなく、立体とお伝えしています。誰がみるではなく、どうやってみるかが大切になってきます。
介護に使えるリソースを洗い出し、誰か一人に負担がかからないように上手に介護と付き合いましょう。
まとめ
元気で天寿を全うしたいと思っていても、いつ介護が必要になるかわかりません。徐々に介護が必要になってくれば心構えもできますが、急に介護が必要になると、慌ててしまうこともあるでしょう。
介護が必要になった時、頼れるのは正しい情報と話を聞いてくれる、気持ちをわかってくれる家族や友人です。
渦中にいると、周りに誰もいないように思えるかもしれませんが、見渡してみれば行政のサービスもありますし、心配して手助けしたいと思っている人もいるでしょう。
それぞれの得意分野を持ち寄って、介護と上手に付き合っていきましょう。