人生100年時代といわれ、昔に比べて老後の期間が長くなっています。自分や自分の家族にはまだ関係ないと思っていても、病気やケガなどで急に介護が必要になるかもしれません。
今回は介護が必要になった時の手続きや、受けられる公的サービスについてご紹介します。
介護が必要になったら
病気やけがが原因で日常生活に介助や介護が必要になった場合の選択肢として
▶︎介護保険を利用せずに介護する
▶︎介護保険を利用して介護する
大きくわけてこの2つの選択肢にわけられます。
介護保険を利用せずに介護する場合
介護保険の認定申請は必要ありません。実際、病気などで介護が必要になっても、介護保険を利用せずに家族だけで介護している家もあります。
介護保険を利用して介護する場合
介護保険の認定申請が必要です。
認定申請をして要介護状態と判定されると、介護保険のサービスを利用することができます。
今回はこの介護保険を利用し、介護保険サービスを受ける方法についてお伝えします。
まずは介護保険制度について把握しよう
介護保険加入と保険料
介護保険に加入するのは40歳になった月からです。医療保険(健康保険・国民健康保険)に加入している40歳以上の人は、 すべて被保険者(加入者)になるので個別の手続きはいりません。
「介護保険」の被保険者は年齢で次の2つに分けられ、サービスの利用内容や保険料の納め方などが異なります。
40歳から64歳の人(第2号被保険者)
認知症や末期がん、関節リウマチなどの加齢による16種類の「特定疾病」により介護が必要になった場合に限り、介護サービスを利用できます。
介護保険料は医療保険と同時に健康保険や国民保険に納付します。
65歳以上の人(第1号被保険者)
病気等の原因を問わず、寝たきり・認知症などにより介護が必要、日常生活に支援が必要と認められた場合、介護サービスを利用できます。
介護保険料は市区町村に納付し、一般保険料は健康保険や国民保険に納付します。
月額1万5,000円以上(年間18万円以上)の年金を受け取っている場合、介護保険料はそこから天引き(特別徴収)されます。
※介護保険料は国民健康保険と同じで、介護保険サービスを利用していても支払うことになります。
介護保険で受けられるサービス
介護保険で受けられるサービスには、自宅で介護している場合に受けられるサービスと施設で暮らしながら受けられるサービスがあります。
自宅で介護している場合に受けられるサービス
公的介護施設の介護サービス
介護保険サービスを利用するために
申請からサービスを利用するまでの流れ
指定申請から介護認定まで
指定申請
◆介護保険の被保険者証
◆健康保険の保険証(65歳以下の場合)
◆マイナンバーカードもしくはマイナンバー通知カード(申請書に記入するため)
介護保険は、市区町村が保険者となりますので、ご本人またはご家族が住民票のある市区町村の担当窓口に要介護認定の申請をします。
(※市区町村の地域包括支援センターや、居宅介護支援事業に相談すると、ケアマネジャーが介護保険申請の手続きを代行してくれます)
入院しているようなら、まずは入院先のソーシャルワーカーに相談してみましょう。
訪問調査・主治医意見書
訪問調査と主治医意見書にて市町村が要介護認定(要支援認定を含みます)を行います。
訪問調査
市区町村から指定された調査員が家庭を訪問して、ご本人の自立の度合いや心身の状態などをご本人の状態を見たり、話を聞いたりしながら調査します。
認定調査の基本調査項目
身体機能・起居動作 | 麻痺・拘縮・座位・立位・歩行・視力などの13項目 |
生活機能 | 移動・飲み込み・排泄・衣服の着脱などの12項目 |
認知機能 | 意思の伝達・見当識・短期記憶などの9項目 |
精神・行動障害 | 作話・感情の不安定・介護への抵抗などの15項目 |
社会生活への適応 | 薬の内服・金銭の管理・買い物などの6項目 |
過去14日間に受けた特別な医療について | 透析・酸素療法・経管栄養などの12項目 |
認定調査員テキスト2009改訂版より
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主治医意見書
市区町村は医師に心身の障害の原因である病気などに関して意見書の記入を依頼します。主治医意見書を作成してもらえる医師の心当たりがない場合には、市町村の指定する医師の診断を受ける必要があります。
審査・判定
保健・医療・福祉の専門家が話し合って、審査を行います。それにより要介護度が認定されます。
通知
申請から原則として30日以内に認定結果がご本人に通知されます。
要支援1~2の人は介護予防サービスを要介護1~5の人は介護サービスを受けることができます。
非該当で自立と判定されると介護予防サービスや介護サービスを受けることはできませんが、市区町村の総合事業や独自のサービスを受けることができます。
認定の更新
要介護の認定は、一定期間ごと(初回認定や区分変更の場合は原則6ヶ月、更新認定の場合は原則として12ヶ月)に見直されます。
また有効期間の間でも、心身の状況が変化した場合は、認定の変更を申請できます。
居宅介護支援事業所や施設サービスを利用している場合は、ケアマネジャーが認定の更新時期を把握しており、申請の代行をしてくれるところが多いので、確認しておきましょう。
要介護認定からサービス利用まで
事業所の選定
要支援1・2の方
地域包括支援センターのケアマネジャーとケアプランを作成します。地域包括支援センターは市区町村のホームページや窓口、インターネットの「介護事業所・生活関連情報検索 介護サービス情報公開システム」でも検索することができます。
要介護1~5の方
居宅介護支援事業所のケアマネジャーとケアプランを作成します。居宅介護支援事業所は市区町村のホームページや窓口、地域包括支援センターで探すことができます。
またインターネットの「介護事業所・生活関連情報検索 介護サービス情報公開システム」では全国の介護保険下のサービス事業所を検索することができます。
施設入所の方
入所した施設のケアマネジャーとケアプランを作成します。
ケアプラン(サービス計画)の作成
介護サービスには様々な種類があります。どんなサービスがあって、どのサービスが最適化かわからないと思うかも知れませんが、ケアマネジャーが、ご本人やご家族のの心身の状況や生活環境や希望を聞いて、一番いいと思うサービスを一緒に考えて提示してくれます。
これがケアプランといわれるものです。
そしてそのケアプランが実行できるように予防介護サービスや介護サービスを提供する施設を一緒に探してくれます。
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サービスの利用開始
ケアプランに基づいて、自宅や施設で介護サービスを利用します。介護サービスを利用するときには、それぞれの介護事業所と契約をする必要があります。
サービス費用の支払い
介護保険サービスを利用した場合、要介護度別に介護保険からの支給限度額が「単位」で決められており、所得に応じて介護保険サービスの費用の1割~3割を負担します。
※支給限度額を超えてサービスを利用することもできますが、その分は、全額自己負担となります。
その他に自己負担分として、例えばデイサービスであれば、食事代や制作活動材料費、日常生活上必要となる諸費用など、介護保険の給付対象とならないサービスについては自己負担となります。(事業所によって費用は様々です)
その他の制度
身体障害者手帳
脳血管障害などで「視覚障害」「肢体不自由」「内部障害」など身体の障害があり、生活に支障をきたす場合に申請できます。
お住いの市区町村の障害福祉担当課が申請窓口です。
精神障害者保健福祉手帳
認知症などの精神疾患があり、日常生活に支障をきたす場合に申請できます。
お住いの市区町村の障害福祉担当課が申請窓口です。
まとめ
介護サービスを受けるためには、認定申請をして、要介護認定を受ける必要があります。要介護認定には原則30日程度かかりますが、その間に介護サービスが受けられないかというとそういうわけではなく、サービス利用料金の全額をいったんお支払いいただき、認定を受けた後、自己負担額を除く金額が介護保険から払い戻される制度(償還払い)があります。
万が一、急に介護が必要になって介護保険のサービスを受けようと思ったら、まずは(入院中であれば)病院のソーシャルワーカーや市区町村にある地域包括センターに相談しましょう。