認知症介護歴32年の看護師が送る認知症介護が楽になる無料PDFを今すぐ手に入れる>>

もしかして認知症?と思った時に慌てない認知症の7つの知識

認知症の物忘れのイメージ

認知症について調べている、「情報」を持っているつもりだけど実際に認知症の人に対応する時に悩んでいませんか?

認知症の正しい知識を手に入れることで、認知症の人への対応や介護が楽になるでしょう。
私が認知症介護の現場で経験し、培った知識を織り交ぜながら認知症や認知症介護についてご紹介します。

認知症とは

時々「認知症という病気なのですが?」と聞かれることがありますが、認知症という病気ではなく、認知症になる原因となる病気があって、認知症という状態になります。

認知症とはいろいろな原因で脳の細胞が死んでしまったり、働きが悪くなったためにさまざまな障害が起こり、生活するうえで支障が出ている状態(およそ6ヵ月以上継続)です。

認知症になると物忘れがひどくなると思われていますが、それだけではなく、判断力や計算、理解力などいう「認知機能」が障害されます。

認知症になる原因の病気は70種類ほどあり(文献によって違います)大きく分けると脳の変性疾患とそれ以外の二次性認知症にわけることができます。二次性認知症のなかには手術などの治療により脳機能が回復し、治る認知症もあります。

私が認知症介護に携わり始めた1989年にはまだ「痴呆症」の名称が使われていました。

ところが「痴呆症」という用語は侮蔑的な表現である上に、「痴呆」の実態を 正確に表しておらず、早期発見・早期診断等の取り組みの支障となっているなどの理由から2004年12月「認知症」という用語に変更されました。

認知症の種類

四大認知症

70種類ほどあると言われている認知症の原因となる病気のうち、約9割を占めているのがこれらの認知症です。

アルツハイマー型認知症

・アミロイドβからなる老人斑が増える
・タウタンパクの凝集体(タングル)が神経細胞内にできる
・脳深部の海馬のほか、側頭葉、頭頂葉が委縮する。

これにより記憶障害や見当識障害、実行機能障害などの認知機能障害がおこります。

関連記事
アルツハイマー型認知症とは?

レビー小体型認知症

・大脳皮質全体、脳幹の神経細胞内に毒性の強いレビー小体ができる
・後頭葉の血流が低下する

これにより、パーキンソン様症状(ぎこちない歩き方)や幻視、記憶障害(初期は軽い)などがおこります。

またレビー小体が交感神経幹に出現することにより、めまいや頻尿などの自律神経症状をおこします

前頭側頭型認知症

・前頭葉と側頭葉の神経細胞が減り、委縮する
・約半数にピック球という以上構造物が出現

人間らしさを司る(理性など)前頭葉が委縮するため、人格の変化がみられたり、一見するとおかしいと思われる行動が生じます。

脳血管性認知症

・脳梗塞や脳出血などの脳血管障害により生じる認知症。脳血管性認知症の約半数は細い血管が障害されて起きる小血管性認知症。

脳血管障害によりダメージを受けた部分によって、症状が異なります。記銘力は保たれていても判断力や理解力が乏しいなどという、まだら症状を呈すことがあります。

治療効果が期待できる認知症

脳の変性疾患による認知症は1年や2年といった年月をかけて徐々に認知症の症状が進行していきますが、もし急激に認知症のような症状がある場合には、早期に受診することで治療可能な認知症の可能性があります。

正常圧水頭症

脳内の髄液が過剰になり、その髄液で脳が圧迫されておこる病気です。
すり足歩行、認知機能障害、尿失禁の三大症状があらわれ、数か月で急速に進行します。
脳にたまった髄液をチューブを通して腹腔などに流す「シャント手術」という治療法があります。

【私の体験談】認知症のAさん。急激に認知症が悪くなり、最近よく転ぶという話でした。病院に行ったら、正常圧水頭症と診断され、シャントの手術。手術後は、もとのAさんに戻ったと家族は喜んでいました。

慢性硬膜下血腫

頭の外傷(打撲など)が原因で頭に血の塊ができて、脳が圧迫されます。頭の外傷のあと3週間~3ヶ月くらいで認知症の症状や麻痺などの症状がでます。
治療法は、手術により頭の血腫を取り除きます。

【体験談】私が病院の脳外科で働いていたときは、慢性硬膜下血腫の患者さんは何もなければ5日~7日で元気になって退院でした。

認知症のBさん。最近急に認知症が進行したとのこと。家族に聞くと、2か月前に転んで頭を打ったとの話。結局、慢性硬膜下血腫で手術しました。家族からは「手術したら、以前の認知症にまで戻りました」と言われました。

その他

甲状腺機能低下症や脱水、その他、薬の影響、ビタミン不足などで認知症様症状が出現することがあります。

認知症の診断【病院受診から診断まで】

認知症の病院受診

認知症かな?と思ったら、まずは病院を受診します。病院では、認知症以外の病気か、認知症なのか、また認知症なら原因となる病気はなにかという診断をつけるために、問診や検査などを行います。

老化と認知症の違い

年をとれば誰でも記憶力は低下しますし、判断力が落ちることもあります。しかし自分が忘れたということを自覚しています。買い物をしたこと自体を忘れることはありませんし、毎日行っているスーパーのなかで迷うこともないでしょう。

ところが認知症になると、病的な物忘れにより、体験自体を忘れてしまいます。買い物に行ったこと自体を忘れます。そして、物事の認識が少しずつできなくなっていきます。またそれらを自覚することができなくなってくるので、なぜできないのかがわかりません。

また、高齢になると前頭葉の働きが低下しますが、認知症になると前頭葉の働きが障害されます。これが老化と認知症の違いです。

病院受診のタイミング

最初はちょっとした違和感から始まるかもしれません。最近、何度も同じ事を言う、聞くようになったとか、料理や計算をミスするようになったとか。

認知症の初期症状があるようならば、受診した方がよいでしょう。

また、家族や周りが気付かなくても、本人が「病院受診したい」といったらそれが最適なタイミングです。

病院受診をしてくれないという話はよく聞きますので、本人が受診したいというタイミングを外さないことは大切です。そこから継続して病院受診することで、(認知症以外でも)病気の早期発見につながります。

普段からかかりつけ病院や担当医と良い人間関係を築いておき、ちょっと変だと思った時には相談しましょう。

何科を受診すればいいの?

いざ受診しようと思ったら何科に行っていいのかわからない。内科なの?外科なの?そう思われるかもしれません。

認知症患者さんを受けている科は精神科や神経内科、脳神経外科が多いでしょう。病院によって、認知症患者さんの受け入れには幅があるので、ホームページや電話で確認してみましょう。

また今は「物忘れ外来」という専門外来もありますので、物忘れ外来がある病院もひとつの選択肢です。

私の一番のお勧めは認知症の事をよく知っている、認知症の症例数をたくさん持っていて、患者さんやご家族に寄り添ってくれる医師がいる病院です。また、認知症に関する本やブログを執筆している医師もいますので、共感できる、納得できる医師の病院を受診するのもお勧めです。

認知症の診断

病院では、問診や視診で病気を疑い、診断をつけるために、検査などを行います。

視診・問診

医師が患者さんを視診(診察時の様子を観察する)したり、本人や家族に問診をします。問診では、本人や家族から主訴(自覚症状や他覚症状)、経過、また過去や現在にかかっている病気などを聞かれます。本人と家族の記憶や症状などが違うことも診断の指標になることがあります。

身体検査

採血や尿検査などの一般的な検査を行い、治療可能な認知症かどうかなどの見極めをしたり、診断の指標とします。

認知症テスト

神経心理学検査のために行われます。認知症テストの代表的なものとして、長谷川式スケールとMMSEの検査があります。

長谷川式スケール(改訂長谷川式簡易知能評価スケール)

日本で広く用いられている検査法で高齢者の認知機能障害の発見を目的としています。言葉を憶えたり、簡単な計算をしたりと30点満点で20点以下は認知症の疑いがあるとされています。

MMSE(ミニメンタルステート検査)

長谷川式とこのテストを合わせて調べる病院も多くあります。日時や場所に関する質問に答えたり、文章や図形を書いたりと30点満点で23点以下なら認知症の疑いがあるとされています。

画像検査(CT・MRI)

CTやMRIで脳を撮影し、脳の病変について調べ、診断の指標とします

認知症の治療

認知症の薬

認知症の薬物療法では、中核症状である認知機能低下の進行を抑える認知機能改善薬が中心に用いられます。
日本で使用できる薬は4剤あり、患者さんの状態に合わせて選択されています。
また周辺症状(BPSD)対策には症状に応じて漢方薬や向精神薬や非定型向精神薬が用いられます。

非薬物療法

回想法、作業療法、芸術療法、音楽療法などの薬によらない治療方法で、医療機関、福祉施設、介護施設などで実践されています。

認知症の症状

認知症の症状は物忘れだと考えられがちですが、それだけではなく、原因となる病気によって、脳のどこが障害(機能が低下すること)されるかによって、様々な症状が出現します。

認知症の中核症状と周辺症状

中核症状

原因疾患により、中核症状が出現します。中核症状には記憶・見当識・実行機能などの認知機能障害や、失語、失認、失行があります。

関連記事
「散歩に行って帰ってこれない」「孫のことがわからない」認知症の症状『見当識障害』とは?

周辺症状(BPSD)

周辺症状(BPSD)とは、行動・心理症状のことです。以前は周辺症状や問題行動などと呼ばれていました。現在はBPSDといわれますが、このサイトではわかりやすく周辺症状(BPSD)の名称を使用しています。

周辺症状(BPSD)は中核症状から二次的に出現する症状で、認知症になったからと言って全員に出現するわけではなく、また環境やコミュニケーションや関係性により症状がよくなったり悪くなったりするのが特徴です。

図のような症状名で呼ぶことも多いですが、もし周辺症状(BPSD)を解決したいと思っているのなら症状名ではなく、なぜその状況になっているのかをしっかりと把握することが大切です。例えば「徘徊」とひとくくりに言っても、10人いれば10通りの徘徊の理由や状況があります。その理由や状況を知ることで、徘徊がよくなる関わりを見つけることができます。

認知症の進行を緩やかにする

家族が認知症になると、認知症の進行を緩やかにしたいと思うでしょう。だってできるだけ昔のままの家族でいて欲しいし、一緒に笑ったり、一緒に泣いたり、一緒に思い出を作ったりしたいと思います。

一般的には認知症の非薬物療法やリハビリとも言われますが、そこで大切なのは、コミュニケーションをとりながら楽しく行うということでしょう。

非薬物的療法やリハビリを行いながら、思い出したり、話したり、聞いたりと相互間のコミュニケーションをとることで、脳が活性化します。

アロマセラピー

アロマセラピーとはアラビアやヨーロッパで昔から行われている伝統医学・民間療法の一つで、一般的には精油(エッセンシャルオイル)又は精油の芳香や植物に由来する芳香を用いて病気や外相の治療、病気の予防、心身の健康やリラクゼーション、ストレスの解消を目的とする認知症にアロマは有効とされています。

認知症の人にもアロマセラピーが有効とされており、実際にアロマセラピーをアルツハイマー病の患者さんに実施したところ見当識の有意な改善がみられたとの鳥取大学の研究発表があります。

生活リハ

生活リハとは、掃除、洗濯などの家事や日常生活の中の作業を行ってもらうことです。

私が経営する通所介護事業所では、日常生活のなかでその人の役割を果たしてもらうことで、心身の維持向上や、自己肯定感の向上をはかっていました。

生活上のことなので、特別な動きをすることはなく、男性でも女性でもでき、なおかつ役立っている感が満載なのでお勧めです。

認知症が進行していても、体で覚えていることは多くあります。その人に合った生活リハビリを提供することで、また意外な一面を見つけることができることも多くあります。

音楽療法

誰かと一緒に歌ったり、楽器を演奏することで、コミュニケーションや社会への関わりにも役立ちます。

一人で音楽を聞く場合にもカナダ・マギル大学の研究では、好きな音楽を聞いていい気分になっているときには、脳内で分泌されるドーパミンが分泌されているそうです。またクラシック音楽を聞くと、副交感神経が優位になって脳波でα波が増え、セロトニンやアセチルコリンの分泌されるといわれています。

歌詞を聞いたり、楽譜を読むことで、左脳の言語的知性の部分を刺激することができますし、歌ったり楽器を奏でることで、右脳の音楽的知性を刺激することができます。

作業療法

生活リハビリも作業療法の一つですが、それだけではなく手先を動かし、完成を想像してその過程を楽しむモノづくりの作業も楽しいものです。介護施設で行うだけが作業療法ではなく、家で何かを作るのもひとつの作業療法です。

認知症が進行すると、複雑なことはできなくなりますが、手先だけではなく、足先も使えるとさらに面白いし、何かを作り達成する工程が何より刺激になります。認知症の段階、進行具合により、内容を提供しましょう
リンク作業療法とは?

運動療法

適度な運動をすることで、筋肉の低下を防ぎ、関節の動きを保ちます。それにより、ロコモティブシンドロームや廃用性症候群を予防することができます。また血流を改善させることで、脳の活性化にも役立ちます。

運動には無酸素運動(筋トレなど)と有酸素運動(ウォーキングやジョギング)などがあります。上手に組み合わせて、身体機能の低下を防ぎましょう。

回想法

人生を振り返ったり、写真や映像を見ることで、昔のことを思い出してもらう。それはただ単に「リハビリ」にとどまりません。

お父さん、お母さんから思いもかけない言葉がきかれることもあります。もしかしたら親に対する見方が変わるかもしれません。回想法をすることで、介護する側が癒されることもあるでしょうし、認知症の人も昔のことを思い出すことで、自分がどんな存在だったかを思い出すきっかけになるかもしれません。

良質なコミュニケーション

認知症の進行を緩やかにするなら、良質なコミュニケーションは欠かせません。

出来ないところばかりに目を向けるのではなく、まだできているところにも目を向けて、プラスのストロークが多い良質なコミュニケーションをとることで、良好な関係を築くことができます。

社会での役割

人間は社会性の動物です。社会での役割があることにより、生きがいなどを感じることができます。

年をとると、様々な役割から外れてきます。子供は手を離れ、仕事も引退。認知症になると、さらに社会から孤立してしまうことが多くなります。

しかし、社会の中で創造性を発揮したり、コミュニケーションをとることで、脳は活性化します。
認知症の進行具合や状況に応じて、家族や地域や社会の中で役に立っていると思えるように援助してみましょう。個人で難しい場合は、介護保険サービスなどの中で、援助してもらいましょう。

認知症の初期症状

もしかして認知症?年をとると、不安になることもあるかもしれません。ここでは四大認知症の初期症状についてまとめました。

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症の場合、海馬が委縮するため、初期の症状として、ついさっき聞いたことを憶えておらず、何度も同じ事を聞くなどの短期記憶障害や、物事をいい按配にすすめることができなくなる実行機能障害が出現します。

そのうちに見当識障害も出現し、なぜできないのかがわからないけど、なぜだかできないという状況になり、「ばかになった」と表現する人もいます。

レビー小体型認知症

記憶障害はあまり目立たなく、動作が遅くなる、足が前に出にくくなって小刻みに歩くなどのパーキンソン様症状や、通常であれば見えないものが見える幻視などの症状が先行することがあります。

睡眠障害が出現する場合もあり、寝ている時に急に大声を出したり、手足をばたつかせたりすることもあります。

前頭側頭型認知症

前頭葉が先に委縮するタイプでは、記憶障害は比較的軽く、前頭葉の委縮に伴う怒りっぽくなるなどの人格の変化や、万引きなどの社会規範からの逸脱行動がみられます。

側頭葉が先に委縮するタイプだと言葉の意味がわからなったり、言葉に支障がでる失語と呼ばれる症状が出現します。

脳血管性認知症

脳血管障害(脳梗塞や脳出血など)の後に出現します。症状は障害された部位によって異なります。

認知症介護

認知症になると、認知機能の衰えと身体機能の低下などから、徐々に日常生活をする上で介助が必要になってきます。日常生活の動作にはIADLとADLがあります。

本人ができることは本人にやってもらうという考え方は大切ですが、そのためには、できることとできないことの見極めが重要になってきます。

IADLとは

IADLとは電話をかけるとか、電車を使うなどいう日常生活の中で道具を使う行為(手段的日常生活動作)のことです。高齢者や認知症になると、まずこのIADLから徐々に難しくなっていきます。

ADLとは

ADLとは食事や入浴といった普段行っている動作(日常生活動作)のことです。認知症が進行すると、認知機能の障害や身体機能の低下により日常生活を自力で送ることが難しくなってきます。そのため介助をする必要がでてきます。

日常生活の介護

IADLやADLが低下する理由は3つあります
①身体機能の問題
②心理的な問題
③認知機能の問題
この3つのどこに問題があるか(全部に問題がある場合もあります)を見極めることで、何ができて、なにができないかを見極めることができるようになります。

IADLやADLが低下すると、生活するために介助や介護が必要になってきます。家族だけで介護をするのではなく、介護保険などを利用して介護サービスを利用する場合も多くあります。

まとめ

認知症や認知症介護に対し不安を感じる場合、その理由の多くは認知症の知識が少なく。無明の状態だからです。認知症の正しい知識を持つだけで、不安や恐怖を軽くすることができます。

認知症介護を楽にするための初めの一歩は認知症について知ることです。まずは認知症について知ることで、認知症や認知症介護に対する不安も減りますし、出ている症状が認知症によるものなのかそれともその人特有のものなのかがわかるからです。

「知は力なり」

認知症に関する正しい知識を身につけて、これから先の高齢化社会を乗り越えて行きましょう。

タイトルとURLをコピーしました