認知症のお母さん、最近食事を食べない。
食卓にご飯を準備して、「ご飯だよ」と声をかけるのに、食べようとしない。
ちょっと食べたかと思うと、すぐ食べるのをやめて違うことを始める。
バランスの良い食事を食べてもらいたい。
体にいいものを食べてもらいたい。
そう思って薄味にして、手作りしているのに、なんで食べてくれないのだろう?
認知症になると、食事を催促するイメージがありますが、認知症が進行してくると、食事を食べてくれないという悩みも少なくありません。
このような時には、お母さんのためと思って、バランスのいい食事の重要性を説得したり、食事を食べるように促すことが多いのですが、それでは逆効果です。
実は、「食事は食卓で食べるもの」「バランスの良い食事、体にいい食事が必要」と思っている介護者は多いのですが、このような思い込みが食事をとれない原因になっている場合があるのです。
この記事では、認知症の人が食事を食べてくれない理由とその対処方法についてお伝えいたします。
食事を食べてくれない場合に見直すこと
食事を食べてくれない場合、まず見直すことは、介護者の想いで食事を提供していないかということです。
家族を思うその気持ちはとてもよくわかりますが、介護者が思いやりだと思っていても、本人の気持ちを置き去りにしていないかを考えてみましょう。
自分の好きなものを好きなように食べていいのなら食べることができても、例えば、「食卓で食べる」「バランスのいいものを薄味で」などといった介護者のルール付では食べられなくなってしまうことが多いのです。
ご飯を食べられないで一番困るのは誰かというと、本人です。
なぜなら生命の維持に関わってくるからです。
ですから、本人が食べられるように食事の方法を考えたり、環境を整える必要があります。
しかしそこで、食卓で食べなくてはいけないとか、バランスのいいものを食べなくちゃいけないというような正論にこだわってしまうと、本人は食べられないで困るし、あなたも食べてもらえなくて困る、両方とも困ることになるのです。
認知症の人が食事を食べてくれない原因と対処法
認知症の人が食事を食べない場合、まずは原因を知り、その人に合った食事の方法を探すこと、その人が食事をとれるような環境を整えることが大切です。
原因を知る
認知症になり、食事を食べてくれなくなる原因は人によって様々です。
例えば、
・食べ物を認識できない
・食事の時の道具(箸や皿など)の使い方がわからない
・どうやって食べていいのかわからない
・おなかが空いているのかどうかわからない
・空腹を満たす方法がわからない
・好きな食べ物ではない
・集中力がなく、気が散る
・食事に嫌な気持ちがある
などがあります。
また、年齢による
・味がわからない
・口の中が乾燥して食べにくい
・消化が悪く、前の食事が残っている
こういった心身の変化も食べられない原因の一つとなります。
これらの理由は1つだけのこともありますし、複数のことが重なりあって食事が食べられなくなるということもあります。
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その人に合った方法、環境を探し整える
原因を知ったら、その人に合った食事の方法を探すこと、その人が食事をとれるような環境を整えましょう。
その時に、食卓で食べる「べき」とか、バランスよく食べる「べき」とか薄味じゃなくちゃ「いけない」などにこだわってしまうと、その人に合った食事の方法を探すこと、食事をとれるような環境を考えることが難しくなります。
もちろん、薄味でバランスのいい食事をとることは理想ですが、食べてくれないのでは、元も子もありません。
体がしんどければ、ベッドの上で食べてもいいし、道具の使い方がわからなければ、おにぎりを手で食べてもいいのです。
魚より肉のほうが好きなら、まずは肉を食べるのでもいいのです。
ハンバーガーが好きならハンバーガーでもいいのです。
そうやって、認知症のお母さんが食べられる方法、食べられるもの、環境をまずは知り、その次の段階として魚を使ったヘルシーなハンバーガーにするとか、ベッドの上でご飯を食べて体力がついてくれば、ベッドの脇で食べる→食卓で食べるとステップアップすることもできるかもしれません。
ですからまずは、自分のなかの、食事とはこうあるべきといったルールを外してみましょう。
ネガティブな気持ちは食事を食べない原因となることも
健康な人であれば、あまりおいしくないとか好きじゃない食べ物でも、体のためを思えば食べることもできます。
なぜなら、それを食べる理由がわかるからです。
また、体のためを思ってとか、あなたのためを思ってと言われれば、納得をする事もできるでしょう。
しかし、認知症になり、認知機能が低下すると、理屈で食事をとることが難しくなります。
「バランスがいい」と言われても、美味しくなければあまり食べたくありません。
記憶障害により、目の前のものが食べ物と認識できない状態で「食べなくちゃだめよ。お母さんのためなんだから。」と言われても納得できません。
この状態を例えるなら、言葉もわからないようなマイナーな外国に行って、見たこともない料理を出されるようなものです。
お店の人がいくらニコニコしていても、体にいいようなことを言っていても、ちょっと食べたくないなと思ってしまうでしょう。
(私は、保守派なので、見たことのない食材が出てきたら手をつけられないと思います…)
「いいからいいから」と言われて口に近づけられたら、嫌な気分になるでしょう。
認知症になると、理論より感情のほうが強く出ます。
好きでもない体に良い食べ物をいいから食べてと説得されて嫌な気分になるより、自分がおいしいと感じるもの、楽しいところなどといったポジティブな感情がでるような環境を提供したほうが、認知症介護はうまくいきます。
まとめ
認知症の人が食事をとれない、とらない理由は人それぞれです。
その原因を見つけ、食べられる方法で食事を提供することで、本人は「自分の食べたいもの」を「自分の食べたいように」食べている気になって食べることができます。
このように、自らの意思で行動していると思えることは、その人の意思を尊重しているということを伝えることができます。それにより、自分は大切にされていると感じることもできるのです。
親のことを大切に思っている気持ち、心配しているという気持ちを、上手に伝えていきましょう。
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