「認知症は改善できます!」という言葉は、認知症の介護をしている人にとっては進行を遅らせることしかできないと思っていたところから、力強く改善できると言われてしまうと藁にもすがる思いになると思います。
認知症が本当に改善するのならそれは本当に嬉しいことですよね。
ですが、現代の医療では慢性硬膜下血腫や正常圧水頭症などの治療可能な認知症以外は根本的に改善できる方法はないと言われています。
そのことも本来であれば理解しているはずなのですが、一縷の望みをかけてしまう心理がそこにあると思います。
認知症を改善できるようになればそれこそノーベル賞ものですよね。
世界的にもそのような論文はありません。
予防に関する論文はたくさんあるのですが、改善できることは科学的には証明されてはいません。
では、認知症を改善したいと思う理由はなぜでしょうか?
私は、まずはそこから考えていかなければいけないのではないかと感じています。
そして、認知症は改善を目指すのではなく、関わり方を知り、認知症の方のQOL(生活の質)が下がらないようにしていくことが重要だと感じています。
認知症に関わる皆さんに対してもう一度根本を考えてみて欲しいと思い記事を書いてみました。
【なぜ認知症を改善できるという言葉に惹かれるのか?】
認知症になった家族や、認知症の方に関わる人にとってはできれば認知症は改善してほしいと感じているでしょう。
認知症患者さんや、家族に振り回される毎日。
どう対応していいのか正解が見えない。
でも、なんとか、患者や家族の為に尽くしたいと考えているけど、肉体的にも、精神的にもとても苦しくなってくると
「できるなら朝起きたら元に戻っていないかな?」
こんな思いを毎日感じているはずです。
そこに、認知症は改善できる!という力強い言葉。
救世主のように見えると思います。
なんとか、良くなって欲しいという願い。
その願いが本当は改善できることはないことを知りながら「改善できる」という言葉に引き寄せられてしまうのだと思います。
そもそもなぜ認知症を改善したいのでしょうか?まずはそこから理解していくことが必要だと思います。
【認知症を改善することって誰のためなのか?】
このように問いかけると、当然ですが本人の為と答えますよね。
ですが、本当に改善に向けた行動って本人が望んでいるのでしょうか?
最近では改善リハビリなどもあるようですが、本人が行きたくない、どこに連れていくかわからないところへ連れて行かれ、脳トレやアロマ、食事、水を飲まされる。
など、本人の意思とは別なことを散々やらせてしまっているわけですよね。
中には嫌がる認知症の方もいると思います。
認知症の人は、自分の意思も経験も感じています。
その意思を確認、コミュニケーションを取らずに押し付けてしまうことが本当に認知症になってしまった本人の為なのでしょうか?
認知症の人の為ではなく、周りの家族、自分の為に改善して欲しいと考えていませんか?
本当に改善に向かわせることが認知症の人への最適なのでしょうか?
「忘れられたら寂しい」「悲しい」「世話が辛い」など様々な感情があると思います。
ですが、それはあくまであなたの感情であり、認知症になってしまった本人の感情ではありません。
本人が拒否するという意思があるのなら、まずはその話を聞くことの方が改善よりも重要ではないかと私は思います。
【認知症の方の話をしっかり聞いていますか?】
何か喋りかけても、「どうせすぐ忘れるし」「良くわからない話をするし」「何度も同じ話を永遠にするから疲れるし」など感じて、話を中断したり、説得しようとしていませんか?
何度も言いますが、認知症の人は、自分の意思もありますし、経験も感じています。
つまり、無視されたりした経験を感じることができていますし、話したいから話しているという意思を持って話をしています。
それを、認知症が進んでいるから同じ話を何度もしていると片付けていませんか?
きちんと話を聞いていれば、その話の中に、認知症の症状の原因や理由があることが多々あります。
改善するよりも大切なことは、認知症の方のことを理解して、人として向き合うことではないか?と思います。
【大切なことは認知症の方達との関わり方です】
現代医学では認知症は改善できないという事実を素直に受け入れることではないかと思います。
そして、認知症の方とのコミュニケーションをしっかり取れば、認知症が進行していても会話ができるでしょうし、行動に対する理解もできるようになります。
とある、改善を謳うリハビリ院でこんな会話があったそうです。
”最初の問診で迷子になって遠くまで歩きケアマネさんたちが探していたという話をしたそうです。
その話をしたら認知症だった本人は、「私すごいなぁ。ようそんな遠くまで歩いたなぁ」と言ったところ、担当の先生は、
「そうじゃないでしょ。ケアマネージャーさんに迷惑をかけて悪かったと思わないと。ケアマネさんに謝ったんですか?」”
と言ったそうです。
なぜそのような対応の仕方を先生がするのかは私にはわかりません。
否定されるような関わり方ではなく、もっと認知症の相手を理解したコミュニケーションを取ればBPSDの悪化も防げると思います。
海外で日本とは違い、認知症への理解が深く、コミュニケーションやケアができています。
例えば、オランダでは、認知症の方だけ(職員もいます)の街があります。
そこでは、認知症の人が“普通の日常”を送れる村というコンセプトの元、買い物で財布を忘れても、お釣りが計算できなくなっても、きちんとフォローすることができます。徘徊があっても見守っている職員が連れて帰ってくれます。
そこでは患者に自立して生活を送ってもらいながら治療を行なうことを目的に作られた療養施設です。
騙しているという声もあるようですが、実際には、良く食べ、良く会話し、長生きをしているという統計が出ているそうです。
拒否していることを無理矢理やらされることよりも、このような場所で自立して生活できる環境の方が幸せではないでしょうか?
また、スェーデンでは、認知症が重症化しない国として有名です。
そのスェーデンでは高齢者の自立心を育む「オムソーリケア」というものがあります。
これは、その人にとっての必要なケアは何か、よく観察し、ポイントを絞ったケアを行い、「お世話」ではなく「自立支援」、を常に念頭に置き、些細なことからも会話を膨らませ、相手からも会話を引き出すという感情をもつ人間によって行われる、入念で心遣いある支援が行われています。
これができるということは、認知症への理解が進んでいて、コミュニケーションがしっかり取れるからこそ何をケアすればいいのかがわかります。
認知症への対応力を今以上に上げるためには、認知症への理解が必要です。
日本アタッチメント協会では、認知症の方の世界を体験できるVR技術を使ったセミナーを行政、医療関係、企業などにも行っています。
正しい知識と考え方と実践方法を学べるセミナーです。
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認知症高齢者に優しい地域づくりを目指して
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1.はじめに
目的の共有
2.認知症や認知症ケアを学ぶステップ
認知症を理解する為の段階について学びます。
3.認知症の人が体験している世界を理解
ワークの入った講義や、VR視聴を通して、認知症の人の立場から見た日常生活をより身近に感じていただきます。
認知症の人の体験を通して、どのようにコミュニケーションをとればいいのかを学ぶことができます。
4.認知症の人との適切なコミュニケーションの基本
認知症の人とのコミュニケーションの基本やその理由、また、自分の介護の在り方について考えます。
コミュニケーションを手段として、良い関係性を作るための方法を考えます。
5.まとめ
ペアワークやシェアなどで、セミナー内容を振り返りアウトプットすることで、学びをより一層深めます。
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