
認知症の方がイライラして見えるとき、その行動の裏には「不快のサイン」が隠れていることがあります。
本稿では、介護現場で起きる“見えない不快”とその背景を解説します。
介護現場では、「なんとなく落ち着かない」「ずっとイライラしている」と感じる認知症の方をよく見かける。
認知症の方が「落ち着かない」と感じる背景には、さまざまな要因がある。
ここではその中の一つ、身体的な違和感と認知のずれという視点から見ていく。
私たちは、シャツを前後ろ逆に着たときや、スリッパを左右逆に履いたときのような「小さな不快感」をすぐに修正できる。
なぜなら、「本来の快適な状態」を知っていて、違和感の原因を自分で特定できるからだ。
しかし認知症が進行すると、「どこが不快なのか」を本人が言葉で伝えることが難しくなる。
快と不快を区別する感覚は残っていても、原因を見つけ出す認知機能が低下してしまう。
その結果、身体や感覚の不調をうまく表現できず、内側に「不快なエネルギー」を抱えたまま過ごすことになる。
これは、たとえるなら会議室でシャツの前後が逆だと気づいたのに、直せない状態に近い。
周囲から見れば小さなことでも、本人にとっては非常に強いストレスだ。
この本人からしたら修正できない違和感こそが、イライラや落ち着かなさの正体である。
介護者ができることは、その「原因の見えない不快」を一緒に探すことだ。
たとえば――
洋服の前後やタグの刺激
靴下や下着の締めつけ
一部が濡れている衣類
オムツや肌着のサイズ不一致 など。
こうしたごく小さな不快が、大きな行動変化の引き金になることがある。
「怒り」「拒否」「不安定」といった表面の反応だけを見るのではなく、
その奥にある「快と不快のバランスの崩れ」を見抜く視点が、介護の質を決める。
認知症のケアとは、感情を抑えることではなく、不快の原因を見つけて取り除くこと。
その視点の変化が、介護を「我慢の時間」から「理解の時間」へと変えていく。
認知症への理解は、個人よりもチームで進めることが鍵です
社内の対話のきっかけとして共有いただければ幸いです
