超高齢化となり、人生100年時代ともいわれるようになった日本では、これからさらに高齢者が増えます。
2021年には65歳以上の高齢者(以下「高齢者」といいます)人口は、3640万人と、前年(3618万人)に比べ22万人増加し、過去最多となりました。総人口に占める割合は29.1%となっており、2040年には35.3%になると見込まれています。
また2020年の65歳以上の高齢者の認知症有病率は16.7%約602万人となっており、2025年には約700万人(高齢者の約5人に1人)が認知症になると予測されており、介護保険制度で要介護になった原因は『認知症』が18%と最も多くなっています。
このような状況に対応するために、厚労省他関係省庁では、団塊の世代が75歳以上となる2025年を見据え、認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域の良い環境で自分らしく暮らし続けることができる社会の実現を目指し、新オレンジプランを策定しました。
しかし、認知症の人が増えているにも関わらず、現状に今は対応しきれていないと、セミナーをしていても感じます。
多くの場合は、認知症ケアや、認知症になった方へのコミュニケーションなどのセミナーや啓蒙であり、「自分が認知症になったときにどうするか?」について考えている人は結構少ないのではないでしょうか?
確かに、認知症関係のセミナーや情報は沢山あります。
認知症の人が増え続けている今、認知症予防や認知症ケアについてネット上の情報は沢山ありますし、セミナーやイベントは行政・民間を問わずあちこちで行われています。
しかし、認知症予防の方法がこれだけ言われていても、認知症患者数は増加する一方です。
なぜなら、認知症の原因となる病気は予防できないからです。
認知症予防と言って生活習慣を整えることで、健康的に過ごすことは大切です。しかし、認知症の原因となる病気を完全に予防することはできません。
また、認知症対応や認知症ケアの方法もこれだけ情報があるにも関わらず、その知識を活かせずに認知症の人に対して対応に苦しんでいる方も多いような気がします。
認知症という言葉を聞いたことがあり、どんな病気、症状なのかを何となくわかっていても、実際には症状の出方は人それぞれで、人によって異なります。
症状は今までの環境や価値観などに影響を受けますが、認知症になってからでは自分の環境や背景、価値観を表現することが難しくなってきます。
認知症ケアを学んでも、対象となる認知症の人の背景、環境、価値観がわからないと、その人に合ったケアをすることが難しくなり、また、認知症のBPSDが悪化する可能性も出てきます。
自分がなった時のことを考えて備えておかないと、介護する側もどうしていいのかわからない、認知症の人も、自分の嫌なことをされて症状がひどくなるといった、認知症に関わる人すべてのQOLが下がることになるのです。
ですから認知症予防やケアの知識も大切ですが、今後認知症患者数が増えていく未来のためには、個々人が認知症への備えをしていく事が重要になっていくのではないでしょうか。